前編:WEBデザインを学ぶのに「派遣社員」という働き方は「活用する価値」はあるが長くはやらない方がいいという話

現在私は某企業で正社員でWEB担当者兼デザイナーとして働いていますが、数年前までは派遣社員という雇用形態で働いていました。
派遣社員をやっていた期間は6年くらいで、短期派遣(2~3か月)や長期派遣(1年以上)で、WEBデザイナーとしてあちこちの会社で働きました。
非正規雇用については派遣切りや待遇面でいろいろと問題を抱えていますが、WEBデザイナーという業務に限定して「派遣社員」という働き方について考えると、私の経験上では必ずしもデメリットばかりではなく、「スキルを磨く」「経験を積む」といった点でかなりメリットの多い働き方だったように思います。
この記事では、私の経験を元に派遣のメリット・デメリットについて書いていこうと思いますが、派遣社員を6年やってきて私が最終的に思うこと、これを伝えたくてこの記事を書こうと思い至ったのですが、それは下記になります。
「派遣社員は長くはやらない方がいい。」
ということです。
とても重要なことなので序論で書いてしまいました。
決して10年も20年もやる雇用形態ではありません。
あくまで社会経験を積む、WEBの場数を踏む、スキルを磨く、など目的を持ち、自分なりに期間やゴールを設定して限定的に就く雇用形態だと思います。
この記事は私の主観100%のものになりますので、働き方について考えた際の参考程度にお読みください。
1.派遣社員とは
まず、派遣社員と正社員はどう違うのかというと、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結び、企業に派遣される社員のことです。
派遣社員は派遣会社と雇用関係にあり、実際に働く企業とは雇用関係がありません。
実際に働く企業と派遣社員の間に、派遣会社が入る形になります。
派遣会社の役割は、企業と仕事を探している人のマッチングや、派遣社員の給与や福利厚生など待遇面の管理などを行っています。
一方、正社員は働く会社と直接雇用契約を結びます。
2.派遣をはじめたきっかけ
「時給が良かった」
私がWEBデザインの勉強を始めたのは32歳の時で、コーディングや画像処理について独学で本を利用して学びました。
ある程度HTMLやCSSの読み書きができるようになり、アドビのアプリも一通り触れるようになった頃、WEBデザイナーとして就職することを考えました。
ですが、「32歳」という年齢、「少々HTMLやCSSが理解できる程度」のスキル、実務経験が「未経験」では、求人自体ほとんどありませんでした。
そこで私が考えたのが、「派遣」でWEBデザインの仕事をすることでした。
なぜここで「派遣」という雇用形態にしたかというと、WEBデザインの仕事をする以前に1年半ほど一般事務の仕事を派遣社員で行っていたからです。
私は20歳代の頃は飲食店で接客業を行っていましたが、夜遅い仕事であったため結婚後、昼仕事をする旦那とすれ違わないように昼間働く仕事に転職することにしました。
パソコンはブラインドタッチくらいはできたので一般事務の仕事を探すことにしましたが、一般事務で正社員となると、当時月給21万円前後が相場でした。
どの求人にも年齢や経験により応相談との一文はありますが、これまで接客業だったため事務未経験です。
私は30歳目前で、「この年齢で21万ってちょっときついな・・・」と思い、正社員にこだわらず仕事を探すことにしました。
すると「派遣社員」という雇用形態であれば、事務職未経験でもパソコンの入力さえできれば時給1600円以上という仕事がいくつもあったのです。
派遣をはじめたのは、単純に時給の良さがきっかけでした。
3.希望の仕事を探してもらえる!
WEBデザインの仕事をしたくても、年齢30歳過ぎ、スキルが未熟、実務未経験だとまず正社員の求人はありません。自力でネットなどで探すのは至難の業で時間が過ぎるばかりでした。
けれど派遣で仕事を探す場合は、自分で探す必要はありません。
派遣会社にコーディネーターと呼ばれる人材を探している企業と、仕事を探している人とを結びつけるマッチングのプロがいます。
派遣社員として働くにはまず派遣会社に登録をする必要があり、登録の際にスキルチェックをされ、カウンセリングで自分の希望の職種や職場環境などを伝えます。
それらの情報を元に、コーディネーターはその人に見合った仕事を探し、適した仕事があると電話などで紹介してくれます。
このように派遣で仕事をする場合は自分で探す必要はなく、コーディネーターからの仕事の紹介を待てばいいのです。
仕事を探すことに時間を取られることがないため、自分の時間を効率的に使うことができます。
4.WEBデザイン希望の場合は、ポートフォリオの提出は必須
けれど、実務未経験でスキルもそんなに高くないんじゃ仕事の紹介自体ないんじゃないの?
と思うかもしれません。
確かにWEBデザインの仕事を希望しているにもかかわらず、HTMLもCSSも全くわからないでは仕事の紹介はないと思います。
ですがWEBデザインの場合、自分の力量を示せるポートフォリオを提出することができます。
たとえ実務が未経験でも、ポートフィリオの完成度が高ければ充分仕事の紹介はありますし、採用される可能性があります。
派遣は仕事探しに時間を割かれることがないので、ポートフォリオの作成や勉強する時間は容易に作ることができます。
私は実際にWEBデザインの実務未経験でしたが、ポートフォリオでスキルを判断いただき採用していただきました。
派遣社員の雇用は、企業にとって契約期間を満了すれば終了することができるので、正社員を雇用するよりもかなりハードルが低く採用されやすいです。
そして派遣社員で実務経験を積みスキルを高め、ポートフォリオの完成度を更に高めていき、自分の納得のいくタイミングで正社員に転職すればいいのです。
5.派遣のメリット
ここで私が感じる派遣で働くメリットを挙げてみます。
- 仕事を探してもらえる
- 採用されやすい
- スキルを磨ける
- 人脈を広げられる
- 福利厚生が意外に充実している
- 長期に亘ってやらなければ給料がいい
1と2は、先ほど述べた通りですが、3以下について少し詳しく触れていきます。
「スキルを磨ける」
長期派遣ではなく短期派遣をこなす
私のように実務未経験で働き始めた場合は、内容問わずWEBデザインの業務に就けたというだで若干のスキルアップになるとは思いますが、同じ職場に長年在籍しても、派遣の場合は業務内容がほとんど変わることがないため、入社時以上のスキルを要求されることもなく、スキルを磨くのにも限界があります。
どの会社に行っても通用するだけのスキルを効率的に身に付けるならば、いくつか短期の派遣を経験するのがいいと思います。
企業が派遣を雇う目的の多くは、即戦力の人材確保です。
短期派遣の場合、あるプロジェクトのメンバーとして迎えられることがあります。
例えばサイトの立ち上げ要員など単発のプロジェクトを実行する際に、あるレベル以上のスキルを持った人材を自社の社員では賄うことができず、短期間だけ派遣会社などに外注するといったものです。
単発のプロジェクトの参加は、一時的に集められたコーダーやWEBデザイナーのプロ達と目的を一つに仕事ができ、刺激にもなりますし情報交換などもでき、得るものが多いです。
私は実務未経験で某企業で1年ほど働いた後、意図的に単発(4か月~1年)の仕事をいくつも繰り返しました。
WEBデザインを独学で学んでいたこともあり、情報や知識の習得は専らネットや本でしたが、プロジェクトの一員になり、実際のWEBデザイナーと関わることで得る生の情報や知識は、ネットや本の数百倍以上価値のあるものでした。
ただ安定した雇用ではないため、常に次の仕事を探さなくてはという不安はつきまといます。
けれど常に現場でいい仕事をすると、それが派遣会社のコーディネーターの耳にも入り、どんどん仕事の紹介がきます。
WEBデザインは一般事務と違って専門職なので、派遣先での評価が高いと希少な人材であるのか仕事の紹介はいくらでもありました。
長期派遣の場合は、学習環境の整っている会社を選ぶ
長期契約の派遣でも、社員の人と同じようなスキルアップ研修を受けることができるところもあります。
私の経験では、某WEB制作会社と某大手ゲーム会社は派遣の人に対しても、スキルアップに関してかなり協力的でした。
例えば、勤務中の社外のワークショップや研修への参加が認められていて、その際の交通費や参加費を出してもらえたり、本の購入費を補助してもらえたり・・・。
WEBの技術は日々進化していて、派遣の人にもスキルアップしてもらわないと業務に支障がでるので、会社としても積極的に応援しますよ、といった考え方なんだと思います。
けれどこれは、その会社に派遣されてみないとわからないというところもあります。
会社によっては派遣の人のスキルアップは個々でやって、というところもありますので。
「人脈を広げられる」
同じような境遇の派遣のコーダーやプログラマー、デザイナー、その他、企業の正社員の人たちなど、たくさん現場を経験するとそれだけ出会いが多いです。
私が派遣で働いていた企業は、大手のIT企業やゲーム会社でした。
現場で出会った人たちと、その場限りで終わってしまう場合がほとんどではありますが、ごくわずか、その後何年にもわたってやりとりをするぐらい仲良くなる場合があります。
今はお互い職場は違いますが、やっていることはWEBデザインなので、たまに会う距離感で情報交換や、雑談などできる貴重な存在となってくれています。
「福利厚生が意外に充実している」
派遣は、福利厚生が手薄だと言われています。
確かに賞与や退職金はないですし、大手企業のような住宅手当や扶養家族手当などもありません。(※派遣会社によってはあるかもしれませんが。)
ですが、派遣会社にもよりますが、教育支援や資格取得手当、スポーツクラブやレジャー施設の割引、ビジネスマナーやカルチャー系のセミナーなどが充実していて、私はかなり活用させていただきました。
福利厚生は派遣会社によって様々で、その内容で派遣会社を選ぶのもいいと思います。
「長期に亘ってやらなければ給料がいい」
WEBデザインという職種に限定した場合、勤続3年4年の正社員の人より給料自体はいい場合が多いです。
派遣の場合、たとえ未経験でもポートフォリオを提出しWEBデザインのスキルが認められれば、採用する側は即戦力を求めているので、その時のスキルに応じた対価を払ってくれます。
つまり、未経験だろうと能力が高ければ、それなりの時給をもらえるということです。
私の場合は未経験の上に技術もそんなに高くなかったので、最初は本当に少ない時給でしたが、勉強をして経験とスキルを上げたところで派遣先を変えていくと、コーディネーターが紹介してくれる業務内容のレベルが徐々に高いものへと変わっていき、それに伴い当然時給も高いところを紹介してくれます。
ここで重要なのが、派遣先を変えることが必要だということです。
同じ職場で何年も長いこと派遣で勤務しても、時給があがることは少ないです。
たとえあがっても数十円です。
なぜかというと派遣社員の業務内容は、基本的に変わることがありません。
長期間同じ職場に在籍しても、更に高難度や責任の重い仕事を任されるわけではなく、ずっと同じ仕事をします。
会社としてはこの仕事にはこのくらいの給料、と決めて派遣を雇っているので、業務内容が大きく変わらない限り何年在籍していようと、給与があがることはありません。
一方正社員は、即戦力を期待した中高年の中途採用は別ですが、若手の社員の場合、育てて成長させ会社の未来を担ってほしい、と考えています。
ですので勤続年数が長くなり経験を積むにつれ、責任の重い仕事を任せたり、配置換えなどでよりレベルの高い仕事をすることになり、それに伴い昇給もしていきます。
入社数年の正社員と派遣社員では、しばらくの間は派遣社員の方が給与がいいかもしれませんが、いずれ抜かれます。
私が派遣社員を長くはやらない方がいいというのは、こういうところにあります。
派遣社員は決められた給料で決められた仕事をやってさえすれば、それ以上のことは期待されません。
ですが正社員に対しては、勤続年数とともにレベルアップを期待するので、責任のある仕事を任せてもらえ、給料もあがり昇格もあります。
給与の面でもやりがいの面でも正社員と派遣社員、どちらがいいでしょうか。
考え方はいろいろあると思いますが、WEBデザインのようなクリエイティブな仕事の場合、やはり仕事に対するやりがいというものは大切なような気がします。
そして、給料の面でもある程度年齢を重ねているのに、二十代半ばの人と同じ程度の給与が永遠に続くのはちょっと・・・と思ってしまうのです。
前編まとめ
この記事では私が派遣を始めたきっかけにはじまり、派遣で働くメリットを書いてきましたが、次の記事では後編として、派遣で働くデメリットと心構えについて書いていきます。
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知ってるか知らないかだけで作業スピードが全く違うので読んで損のない本。